大丈夫よとその人は言う。
もう怖いことはないからね。
大丈夫だからね、鈴。
優しい腕。いつでも抜け出せる強さ。
優しい匂い。石鹸と、この人の作る料理でできた。
暖かい体温。生きている温度。
母親というものを描いてみたら、きっとこの人ととても似ている。けれど。
けれど、今日も。思い出すのは。
優しい腕。強く、まるですがるみたいな。
優しい匂い。でも、少し血の香りが混じる。
熱い体温。生きている温度。でもどんどんと凍えていくからだ。
燃えつきるように消えた。私のたった一人の人。
藍としか呼べなかった人。
母と呼べなかった彼女。
呼ぶと悲しげにした彼女。
いつか迎えに来てくれる人をそっと描いて、ぼんやりと瞼を閉じる。
背中に添えられた手のあたたかさに、一言も返せないというのに。
宥めるように繰り返される大丈夫に、じわりと涙がにじんだ。
拾われた直後の鈴と養母さん。寝る前に震えること抱きしめる人。
鈴の性格はしいて言えば生母が一番近いっちゃあ近いけど盲目的にたった一人しか映せないのはまるで生父譲り。まあ。環境で形作られたものかもしれませんけどね。
