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愛憎劇のはじまりのお話

昔昔、あるところに。母を亡くした男の子がいました。
 母の葬儀の日、男の子はぼんやりと外にいました。
 ぼんやりと待っていれば、母が迎えにきてくれるのではないかと思っていたから。

 けれどもう迎えなどなく。代わりに聞こえるのは、葬儀を後にする大人たちのささやきだけ。
 いわく、彼の母は。
 可愛そうな人だったのだという。


 かわいそうね、まだ若いのに。
 そうよね、苦労ばかりして。

 身寄りもなかったらしいわよね。
 あんなに優しい人だったのに、つくづく苦労ばっかりだったのね。
 せめてもうちょっと身軽なら、頼れる家族でもできてたんじゃない。いい人だったもの。

 そうよね。その上子供までいたらねえ。再婚しようもないし。
 本当にかわいそうね、もっと幸せになってもいいようなのに。

 ぼんやりと、人目を避けてぼんやりと空を見上げる少年に、誰も気づくことはありません。
 お母さんは、可愛そうだったのか、と。
 小さく呟く声に、誰も気づかないままでした。


 母が死んだ後に、男の子は孤児院に引き取られました。
 かつて母が育った場所で、周囲は優しかった。似たり寄ったりの境遇の子供ばかりで、少々辛気臭くはあったけれども。

 それでも、彼はぼんやりと思っていました。
 ――――今、俺は。寂しいだけだけど。
 母は、ずっとかわいそうだったんだろうか、と。

 わからないまま、ずっとそんなことを考えていたある日。
 少年はかすれた声を聞きます。

 目の前には、一人の男。
 仕立てのよいスーツを着た、黒い髪に黒い瞳の。若い男だった。

 見たこともないのに、どこかで見覚えのある彼は、今にも崩れそうな顔で彼の母の名を呟いていて。
 ほんの一瞬だけ、ふんわりと笑った。





 それから、男は孤児院に古くからいるある女性と、ひどく言い争っていたようでした。
 否。一方的にずいぶんと罵られていたようで―――その日はそのまま、帰っていった。


 それからしばらくして、男は再び現れました。
 ぼんやりと男を見上げる少年に、膝を折り、ぎこちなく手を伸ばし、ぎゅっと手を握り。

「お前だけでも、生きていてくれたなら…良かった」

 いまにも泣きだしそうなその声に、周囲の態度に。
 男の子は目の前の男が誰かを分かっていて―――

 強く握られた手に、とてもうれしそうに微笑みました。
 特に何を考えたわけではなく―――ただ嬉しくて、ふんわりと笑いました。 




 この時点ではただの可愛そうな少年な遥霞が、父の嬉し気なセリフが正確には「彼女の忘れ形見のお前だけでも、生きていてくれたなら良かった」なことを知るのはちょっと先。
 死んだ目でなんでお前だったんだろうなあ(彼女が生き残るんじゃなくて)とか言われるのはさらにちょっと先。お前は何を言ってるんだとつっこむ人はいなかった悲劇。
 なんで父が息子引き取ったかってまあその。彼女の忘れ形見手元に置きたかっただけで。置いてみたら余計に病んだ。会わなきゃもう少し正気でいたかもしれない。
 似ていないわ考えてみると俺は全然一緒にいられなかったのにこいつ10年近く一緒にいれたしなんなのむかつく。というお前は何を言っているんだ的なあれやこれやでねちねちと無視されたり気まぐれに優しくされたりされた結果があんなん。好きな子に愛してる言われると「君も俺を裏切るんだ」逆ぎれる地雷物件。
 これだけ書くと理不尽だけど同じ立場になったら同じことをしかねない実に似たもの親子。
 そもそも息子が父親を慕った理由つきつめると「母が愛した人だから」だし。なんですかそんなにお母さんが好きですかと智華はキレてもいい。キレないけど。

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利害が一致してるだけ


「竜臣。君いっつも顔色が紙だよね。バカバカ酒ばっかり飲んでいるからじゃない。二日酔いっていうか毎日酔ってるみたいな」
「毎日はのんでねーし。顔色悪いのお前のせいだし。他人を心配するときはその心っ底楽しそうに緩んだ面をしまえ畜生」
「え、君の気持ちを和ませようと思って☆」
「しなをつくるな気色わりぃ! 誰の、誰のせいで今俺が死ぬほど忙しいと!?」
「いや。しいて言うなら希羅のせいじゃない?」
「あああの馬鹿のせいだよ! お前が! 十分な情報をよこさず! どう考えても故意に暴れさせたあの馬鹿のせいだ!!」
「あはははは」
「笑うなぁ!」
「どっちかっていうと善意なんだけどなぁ。だって君。君だってああいうのは殴りたいでしょ」
「…いや、そんな、面倒なことは。しない」
「だろうねー。だからそんな面倒なことを気にできない希羅をつけてあげたのに。
 …しかし途端に目が泳ぐあたり、君も希羅もホント人がいいね」
「………それですっげえいい笑顔を浮かべるあたり。お前の性根は本当根からどうかしているよ」



「あはは。知ってる」
「…なおせよ。なら」
「ははは。無理」
「…本当に、腹立つわ。お前の笑顔…」



 利害が一致しているだけ。竜臣と遥霞。
 お互い友達とは思っていない。部下と上司と口に出しているけど気もちは「共犯」くらい。竜臣が人の上に立つのアレルギーだからああなっている。
 そして竜臣のメンタルは主に「死んだ兄が報われるように」と6割くらい兄で占められていてなかなか鬱陶しいのでその面倒なのを気にせず脇において重宝がるのはあの三人の中では遥霞だけだろうな。 死んだ母が守ろうとしていただろうものを守るために人生泥川に投げ捨てた人だから。
 主にもっぱら死人ばかり見ているメンタルがあれな人達。

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何も変えれぬイレギュラー


 この目にうつるのが過去だけなら良かった。
 今目の前にいる者など、なにもうつさずに。
 自分の心など、何も感じずに。

 求められるまま、ヒトガタでいれたらよかった。





 この身は誰も救わない。
 この血肉を作った故郷も、目の前の異邦者達も。

 私はなにもできはしない。
 そのことに何も感じなければよかったのにと、今はそれだけ思ってる。


 一人生きる世界が違う人。セレナさん。
 好きで好きで仕方ない人がいてそれとくっつく未来が用意されているわけですがやっぱり生きる世界は違うままの人。
 複数ルート考えている(形にはしないけど)黄昏でなにがあっても病みはしない人その1.その2は雅輝。他はいない。

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帰路を探す


 ―――あの日のことは、実のところ良く覚えていない。
 ただ熱くて、この場から逃げなくて死ぬと思って。守ってくれていたものがなにもないと、気づいた頃に。
 ついておいで。会わせてあげる。助けてあげる。
 嘘みたいに綺麗な、嘘だからこそお綺麗な言葉に、死にたくなくて頷いて。
 けれどあの時、終わっていればとたまに思う。
 生き残ったという贅沢が、できもしない潔い未来を想像させる。

 ―――あの日のことは、実のところ良く覚えていない。
 ただ怖くて、あの場から逃げたくて。手をひいてくれる人がいないと、泣いていた頃に。
 ついておいで。会わせてあげる。助けてあげる。
 嘘みたいに綺麗な、嘘だからこそお綺麗な言葉に、すがりたくて頷いて。 
 だからあの時、諦めていたならとたまに思う。
 生き残ったという罪悪が、できもしない綺麗なままを夢見させる。




 あの日消えた帰りの道を、今も苦しく夢に見る
 もう二度と、家族のいるところになど。

 いけないだろうと、知っているから。


 元ご近所組(ただし当時の面識はない)ライドとマリシエル。
 あー色々やらかす前にいっそ死んでればよかったかなー。今やりたいことあるからその気はないけどー。とどちらも思ってる。
 方向性は違うけど。性格も違うけど。でもたまにああ帰りたいなあと思ってる。

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牙を抜く


 ―――気が付いたら、手が真っ赤だった。
 それを不幸だとも、嫌だとも思っていなかった。昔は。
 そういう言葉を知らなかった、昔は。
 けれどその意味を知って。己の言葉と、向けられた言葉の意味を知って。
 そのままはどうしよもなく嫌だった。

 ―――気が付いたときには、手に銃しかなかった。
 それが不思議だとも、嫌だとも思わなかった。昔は。
 不思議で不自然で、嫌がるのが普通なのかなと、今は思う。
 だからその理由を知ろうとして。失った過去と、ただここにいる今も思って。
 このままでいれたらとぼんやりと祈ってる。




 なにもない過去に、なにもないこの身に、覚えているのは一つ。
 自分と同じ生き物が焼ける匂いに、血を流す匂い。

 それだけが過去の自分の願いなど、きっと最初から届かないけれど。




 人外魔境要飼育組。慶とりお。
 一人にいたら割とあっさりどっかでのたれ死ぬ程度に偏りに偏ったステータス。誰かに使われるために故意に偏らされたステータス。
 二人ともそれに気づいているし、まあそういうものだと納得している。なにしろ他など想像の範疇外だから。

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