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お兄ちゃんと一緒


 妹は良く泣く。
 良く笑うし、良く怒るし、良く泣く。
 うるさい生き物だなあ。似たような顔をしてるのに。

 ようはあまり似ていない妹のことを、武行はそう思ていた。




「おにいちゃん」
「…なに」
「廊下。がたがたいって。…うるさい」
「怖いのか」
「ちがくて、うるさいの!」
「…そっか。うるさいか。じゃあ、なに」
「ねるの、やだ」
「……ん。じゃあおいで」
「うん」

 良く笑って良く怒って良く泣く妹は―――
 それでも、最近まではここまでびくびくと生きてはいなかった。
 風の音に怯えて、がたがたと震えてやってくることなど、決して。

「…おにいちゃん」
「なんだ」
「なんでもないけど。…おにいちゃん」
「…うん?」
「おにいちゃん」
「うん」
「お母さんはいつかえってくるの?」
「……まあ。そのうちだろ」

 この妹が、こんなにも不安定になったのは。
 今、泣きそうな顔で兄にすがってくるのは。

 ―――自分が殺されかけて、自分を殺しかけた人間の殺される姿を見て。その返り血にまみれた、母を見て―――
 色々あったせいだなあ、と。兄は知っている。

「お兄ちゃん」
「うん」
「…お兄ちゃんも、どっかに行くの?」
「どうだろうなぁ」
「行くときは、おいてかないでね」
「……考えておくよ」

 それもどうだろうなあ、と。
 浮かんだ言葉を妹に告げれなかった理由を、その時の彼は知らない。

 それからいくつも年を重ねて。
 可愛いか弱い妹が、険しい顔ばかり向けるようになったころには、彼はもう気づいている。

「……連れてかないよ」

 どこかにいくときは、この街を出るときは。
 きっと俺の死ぬ時だろうと、今ならそう思うから。





 相互ブラ(シス)コンな深丞兄妹。
 まあまともな環境につっこんだら別にふつーにすごしてたんだろうけれども。小さい頃に色々あった所為で不安定だった妹と、その妹をほっとくほど冷酷ではなかったころの兄のお話。
 今はお互い安定したけどお互い安定したところが色々とろくなところじゃない二人ともいう。












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