なにもいらないと思っていた。大切なものは、何一つ。昔みた、それを失った人の末路が、怖すぎて。悲しくて。
そうして生きていたから、いつのまにやら大事なものとは距離ができていて、そうして。それでいいと思っていたのに。
「あんたと会わなきゃ安らかだったわ」
「なら、安らぎとは随分と幸薄いものだね」
よくもまあ、そんな自惚れた台詞が出るものね。毒づきながら、肩にある手を払いのける。そうすると、へらりへらりと笑われる。
それに腹が立って、怒鳴ってみたりもするけれど。なんというか、本当は。色々とかなわない。
かなわなくて、負けたから。傍にいましょうか。
いつまで一緒にいれるのか、分からないけれど。
神宮夫妻たぶんまだ夫妻じゃない頃。似た者夫婦で似たもの親子。

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